【完全版】特定技能「外食、飲食」の受け入れ方法【要件や雇い方】

「外食業」分野で特定技能の在留資格を持った外国人を雇用する方法を分かり易く解説しています。この記事を見れば「外食業」分野での受け入れまでの流れが理解できるような内容になっていますので、ぜひご活用下さい。

行政書士
行政書士

特定技能制度には、「業種共通の要件」と「業種特有の要件」が存在します。業種共通の要件とは、どの業種で雇用する場合にも適用される要件の事です。もちろん業種共通の要件はクリアしていなければ特定技能で外国人を雇う事はできません。

採用担当者
採用担当者

業種共通の要件はなんとなく分かりました。もう1つの業種特有の要件とはどんなモノですか?

行政書士
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特定技能で外国人を雇用できる業種は、現在14業種があります。この14業種ごとに所管省庁が決められており、業種ごとにクリアしなければならない要件が設定されています。これが「業種特有の要件」です。

この業種特有の要件を見落とさないようにしないと、せっかく在留資格の申請をしても許可がおりない事になるので注意が必要です。

採用担当者
採用担当者

なるほど。では、弊社で雇用を検討している「外食業」分野の業種特有の要件にはどんなモノがありますか?

行政書士
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では、14業種共通の要件と、「外食業」分野の業種特有の要件、雇用までの流れを順番に説明していきます。

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特定技能「外食業(飲食店)分野」の特徴

出典:農林水産省「外食業分野における新たな外国人材の受入れについて」

はじめに、特定技能「外食業分野」の特徴を見てみましょう。特定技能における外食業分野の特徴には、以下のようなものがあります。

特定技能「外食業分野」の特徴
  • 留学生からの変更が多い。
  • 試験免除になる技能実習生は現状いない。
  • 個人事業主も多い。
  • 勤務時間に注意が必要。

上記資料の通り、飲食店でアルバイトをしている外国人留学生も多く、大学や日本語学校を卒業後、そのままアルバイト先の飲食店に特定技能で勤務するというケースが多くなっています。(試験免除になる技能実習生については、後ほどご説明します)

特定技能14業種の中でも、外食業分野は飲食店を個人で経営されている個人事業主も多くあるのが特徴です。特定技能の在留資格申請では、外国人の受入れ先が個人事業主と法人とでは、入管へ提出する必要書類が違いますので注意が必要です。

また、外国人の勤務時間にも注意が必要です。飲食店では一般的にシフト制で勤務する場合も多くあります。この場合、所定労働時間と時間外労働との兼ね合いに注意が必要です。

特定技能で働く外国人の勤務時間を雇用条件書でしっかりと明記し、時間外労働(残業)にはキッチリと法定の時間外手当を支払う必要があります。また、勤務時間(所定労働時間)についても、法定(労働基準法)の範囲内かどうかに注意する必要があります。

特定技能14業種に共通する要件

次に、特定技能で外国人を雇う為の条件を見てみましょう。

条件には、外国人本人と受入れ企業の条件があります。さらに、受入れ企業の条件には、特定技能14業種に共通する条件と、外食分野だけの条件があり、どちらもクリアしている必要があります。

まずは、特定技能14業種に共通する条件からご説明します。

受入れ企業の要件

受入れ企業に求められる14業種共通の条件は、大きく分けて以下の4つです。

外国人を支援する体制についての条件

外国人を支援する体制についての条件は、後ほど「1号特定技能外国人の支援」という所で解説します。

雇用契約の内容についての条件

企業と外国人とで結ぶ「雇用契約」についてのクリアすべき条件です。クリアしているかは、「雇用条件書」や「報酬に関する説明書」などの書類を提出することで入管が判断します。

  • 分野省令で定める技能を要する業務に従事させるものであること
  • 所定労働時間が,同じ受入れ機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること
  • 報酬額が日本人が従事する場合の額と同等以上であること
  • 外国人であることを理由として,報酬の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について,差別的な取扱いをしていないこと
  • 一時帰国を希望した場合,休暇を取得させるものとしていること
  • 労働者派遣の対象とする場合は,派遣先や派遣期間が定められていること
  • 外国人が帰国旅費を負担できないときは,受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること
  • 受入れ機関が外国人の健康の状況その他の生活の状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること
  • 分野に特有の基準に適合すること←後ほど解説します。

支援計画の内容についての条件

特定技能で働く外国人を支援する「計画」についてのクリアすべき条件です。クリアしているかは、「支援計画書」などの書類を提出することで入管が判断します。

  • 支援計画にア~オを記載すること
    ア:支援の内容
    イ:登録支援機関に支援を全部委託する場合は,委託契約の内容等
    ウ:登録支援機関以外に委託する場合は,委託先や委託契約の内容
    エ:支援責任者及び支援担当者の氏名及び役職名
    オ:分野に特有の事項
  • 支援計画は,日本語及び外国人が十分理解できる言語により作成し,外国人にその写しを交付しなければならないこと
  • 支援の内容が,外国人の適正な在留に資するものであって,かつ,受入れ機関等において適切に実施することができるものであること
  • 本邦入国前の情報の提供の実施は,対面又はテレビ電話装置等により実施されること
  • 情報の提供の実施,相談・苦情対応等の支援が,外国人が十分理解できる言語で実施されること
  • 支援の一部を他者に委託する場合にあっては,委託の範囲が明示されていること
  • 分野に特有の基準に適合すること(※分野所管省庁の定める告示で規定)

受入れ企業自体がクリアする条件

受入れ企業自体がクリアしなければならない条件です。クリアしているかは、「労働保険料等納付証明書(未納なし証明)」や「健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し」、その他の提出書類から入管が判断します。

  • 労働,社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
  • 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
  • 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
  • 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
  • 特定技能外国人の活動内容に係る文書を作成し,雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
  • 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
  • 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
  • 支援に要する費用を,直接又は間接に外国人に負担させないこと
  • 労働者派遣の場合は,派遣元が当該分野に係る業務を行っている者などで,適当と認められる者であるほか,派遣先が①~④の基準に適合すること
  • 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
  • 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
  • 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
  • 分野に特有の基準に適合すること←後ほど解説します。

外国人本人の要件

外国人本人に求められる条件は以下の通りです。

特定技能1号・2号に共通の条件

  • 18歳以上であること
  • 健康状態が良好であること
  • 退去強制の円滑な執行に協力する外国政府が発行した旅券を所持していること
  • 保証金の徴収等をされていないこと
  • 外国の機関に費用を支払っている場合は,額・内訳を十分に理解して機関との間で合意していること
  • 送出し国で遵守すべき手続が定められている場合は,その手続を経ていること
  • 食費,居住費等外国人が定期に負担する費用について,その対価として供与される利益の内容を十分に理解した上で合意しており,かつ,その費用の額が実費相当額その他の適正な額であり,明細書その他の書面が提示されること
  • 分野に特有の基準に適合すること後ほど解説します。

特定技能1号のみの条件

  • 必要な技能及び日本語能力を有していることが,試験その他の評価方法により証明されていること(ただし,技能実習2号を良好に修了している者であり,かつ,技能実習において修得した技能が,従事しようとする業務において要する技能と関連性が認められる場合は,これに該当する必要がない)
  • 特定技能1号での在留期間が通算して5年に達していないこと

特定技能2号のみの条件

  • 必要な技能を有していることが,試験その他の評価方法により証明されていること
  • 技能実習生の場合は,技能の本国への移転に努めるものと認められること

在留資格変更の場合の条件

海外から外国人を呼ぶ場合ではなく、日本に既にいる留学生などの外国人が特定技能に在留資格変更をする場合は、上記の「外国人本人の要件」以外に、以下のような条件も審査の対象になります。

  • 今まで持っていた在留資格に応じた活動を行っていたこと。
  • 素行が不良でないこと。
  • 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。
  • 納税義務を履行していること。
  • 入管法に定められている届出等の義務を履行していること。

要するに、今まで日本にいた期間、法律を守ったり、税金を払ったりしていたかという点を審査されます。

特定技能「外食業」分野特有の要件(受入機関)

出典:農林水産省「外食業分野における新たな外国人材の受入れについて」

次に、特定技能で働く外国人を雇用する企業に求められる「外食業」分野特有の条件をご説明します。要件は以下の通りです。

「外食業」分野特有の要件
  • 飲食サービス業を行っている事業所に就労させること(立証書類で「保健所長の営業許可証の写し」の提出が必要です)
  • 風営法第2条第1項に規定する風俗営業及び同条第5項に規定する性風俗関連特殊営業を営む営業所において就労させないこと。
  • 風営法第2条第3項に規定する接待を行わせないこと。
  • 派遣形態で就労させないこと。
  • 「外食業」分野の協議会に加入すること。

飲食サービス業を行っている事業所」には、以下のようなものが該当します。

①客の注文に応じ調理した飲食料品,その他の飲食料品をその場で飲食させる飲食サービス業(例:食堂,レストラン,料理店等の飲食店,喫茶店等)

②飲食することを目的とした設備を事業所内に有さず,客の注文に応じ調理した飲食料品を提供する持ち帰り飲食サービス業(例:持ち帰り専門店等)

③客の注文に応じ,事業所内で調理した飲食料品を客の求める場所に届ける配達飲食サービス業(例:仕出し料理・弁当屋,宅配専門店,配食サービス事業所等)

④客の求める場所において調理した飲食料品の提供を行う飲食サービス業(例:ケータリングサービス店,給食事業所等)

「外食業」分野で特定技能外国人を働かせてOKな業務内容

主として従事させる業務

・外食業全般(飲食物調理・接客・店舗管理)

※大前提として、この「主として従事させる業務」をメインで外国人にさせていないと、在留資格の取消しや、不法就労助長罪(会社等にも罰則)などのトラブルになる可能性がありますので十分注意しましょう。

飲食物調理:客に提供する飲食料品の調理,調製,製造を行うもの(例:食材仕込み,加熱調理,非加熱調理,調味,盛付け,飲食料品の調製等)

接客:客に飲食料品を提供するために必要な飲食物調理以外の業務を行うもの(例:席への案内,メニュー提案,注文伺い,配膳,下膳,カトラリーセッティング,代金受取り,商品セッティング,商品の受け渡し,食器・容器等の回収,予約受付,客席のセッティング,苦情等への対応,給食事業所における提供先との連絡・調整等)

店舗管理:店舗の運営に必要となる上記②業務以外のもの(例:店舗内の衛生管理全般,従業員のシフト管理,求人・雇用に関する事務,従業員の指導・研修に関する事務,予約客情報・顧客情報の管理,レジ・券売機管理,会計事務管理,社内本部・取引事業者・行政等との連絡調整,各種機器・設備のメンテナンス,食材・消耗品・備品の補充,発注,検品又は数量管理,メニューの企画・開発,メニューブック・POP 広告等の作成,宣伝・広告の企画,店舗内外・全体の環境整備,店内オペレーションの改善,作業マニュアルの作成・改訂等)

関連業務として従事させてOKな業務

・店舗において原材料として使用する農林水産物の生産

・客に提供する調理品等以外の物品の販売

※関連業務ばかりに従事させる事はNGです。

外国人に従事させるとNGな業務

・風営法第2条第3項に規定する「接待」

※この業務をさせていると、他の事は守っていても取消し・罰則等の対象になりますので注意が必要です。

特定技能「外食業」分野の技能試験(外国人本人要件)

出典:農林水産省「外食業分野における新たな外国人材の受入れについて」

「外食業」分野で雇用する場合、外国人は「外食業技能測定試験」に合格している必要があります。※「外食業技能測定試験」の詳細は下記リンク記事で最新の日程や試験内容をご紹介しています。

特定技能「外食業」分野の技能実習生からの移行職種

在留資格「技能実習2号」を良好に修了(3年)した外国人は、上記「外食業」分野の技能試験が免除されます。※免除となる為には、技能実習時代の職種と特定技能で行う職種に「関連性が必要」です。

左が技能実習時代の作業名。これを行っていた技能実習生は、右の特定技能の職種で働く場合に限り、特定技能の試験が免除されます。

技能実習時代の作業名特定技能で試験免除になる職種名
医療・福祉施設給食製造外食業

※技能実習時代に上記以外の作業をしていた場合は、技能実習2号を良好に修了していても「外食業」分野の技能試験は免除にはなりませんが、日本語試験は免除されます。

「外食業」分野の技能実習について

技能実習の上記「医療・福祉施設給食製造」は、2018年11月から対象職種に追加されています。つまり、医療・福祉施設給食製造を3年修了した技能実習生は現状まだいません。ですから、特定技能「外食業」分野の試験が免除される技能実習生が登場するのは、もう少し先の話になります。

1号特定技能外国人の支援

特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する場合、「各種支援」が特定技能制度で義務付けられています。この各種支援を登録支援機関に委託せず「自社で行う場合」には、以下の自社で支援を行う場合の要件が受入れ企業に求められます。

自社で支援を行う場合の要件

※登録支援機関に支援の全部を委託した場合は、以下の受入れ企業要件は免除されます。

自社で支援を行う場合の受入れ企業要件
  • 2年以内に中長期在留者(就労系のビザを持った外国人)を適正に雇用した事があり、かつ、役職員の中から支援責任者と支援担当者を選任していること。
  • 雇用する外国人が「十分理解できる言語」を話せる社員(通訳派遣も可)がいること。
  • 支援状況に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと。
  • 支援責任者及び支援担当者が、支援計画の中立な実施を行うことができ、かつ、欠格事由に該当しないこと。
  • 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと。
  • 支援責任者又は支援担当者が、外国人及びその上司等に定期的な面談を実施する体制を有していること。
  • 分野特有の基準に適合すること。

特定技能「外食業」分野の協議会費用と加入方法

「外食業」分野の協議会は、「農林水産省」のホームページから加入手続きが可能です。※以下のリンクからお手続きください。

「外食業」分野協議会の豆知識

加入費用:「外食業」分野の協議会の加入費用は無料です。

登録支援機関の加入義務:「外食業」分野の協議会は、登録支援機関の加入は「義務」です。

特定技能「外食業」での外国人雇用ルート

特定技能を使って外食業(飲食店)で外国人を雇用する場合、当面の間は日本にいる留学生からの在留資格変更というルートがメインになってくると考えられます。

留学生のアルバイトを雇っていた飲食店で、卒業後そのまま特定技能に変更して正社員として雇用といった流れです。(外食業の特定技能試験の合格は必要です)

上記で説明したように、特定技能の試験が免除になる技能実習生は現状いない為、留学生からの移行が多くなると予測されます。(実際、当事務所でも飲食店で働く留学生を特定技能へ変更という相談が増えています)

最後に「外食業」分野での受け入れまでの流れを確認!

「外食業」分野での受け入れ流れ
  1. ①雇用する外国人が技能試験と日本語試験をクリアしているか確認後、「特定技能雇用契約」を結ぶ。
  2. ②上記①と並行して、自社が特定技能の「受入機関の要件」とこのページの「外食業」分野特有の要件をクリアしているか確認。(確認方法は行政書士に聞いたり、法務省のホームページにある運用要領を読み込む)
  3. ③上記①と②をクリアしたら、外国人本人に健康診断の受診と、在留資格申請に必要な書類を用意するよう指示する。
  4. ④上記③と並行して、「支援計画書」・会社の必要書類・在留資格の申請書類を準備する。(行政書士に依頼するか自社で作成)
  5. ⑤事前ガイダンスを3時間程度かけて外国人に対して行う(自社か登録支援機関で行う)
  6. ⑥在留資格の申請を行う
  7. ⑦上記⑥が許可になれば雇用開始。※外国人が海外にいる場合は入国手続き(在外公館でのビザ申請など)→入国する空港等へのお迎え(支援義務あり)
  8. ⑧ハローワークへの届出、各種福利厚生の手続等を行う
  9. ⑨外国人に対して支援を実施※生活オリエンテーション、その他支援(自社か登録支援機関で行う)
  10. ⑩「外食業」分野の協議会に加入。※4カ月以内
  11. ⑪義務付けられた「届出」や「定期の面談」を行う(自社か登録支援機関で行う)

【参考】業種別の「雇い方」や「特有の要件」の解説記事

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