特定技能の在留資格で外国人を雇用する場合、海外にいる外国人を雇用するケースと日本にいる外国人(留学生や技能実習生)を雇用するケースに分かれます。
ここでは、海外にいる外国人を雇用する流れ(受け入れ流れ)を分かり易く解説します。
こまかい解説の前に、まずは雇用までの全体像を把握していきましょう。
- 外国人の支援体制を整える
- 業種別の「協議会」に加入する
- 特定技能で雇用できる外国人を探す
- 採用が決定したら「特定技能雇用契約」を外国人と締結
- 「1号特定技能外国人支援計画」を作成する
- 特定技能の「在留資格認定証明書交付申請」を行う
- ビザの発行後に入国
- 就労開始前に実施すること
それでは、上記の1~8を順番に解説していきます。
外国人の支援体制を整える
特定技能で外国人を雇用する企業は、外国人が日本に在留中に「安定的・円滑な活動を行うことができるようにするため」に、外国人を支援する必要があります。この支援は、企業自身で行うか、登録支援機関という機関に委託して行います。
①入国前の外国人への情報提供
・外国人と企業との雇用契約の内容
・外国人が日本で行える活動内容
・その他、外国人が日本に在留するに当たっての注意事項など
②外国人が出入国する際の送り迎え
③生活に必要な契約の支援
・外国人の住居の確保に係る支援
・外国人の銀行口座開設の支援
・携帯電話を契約する際の支援など
④在留中の外国人への情報提供
・日本で生活するに当たっての一般的な情報
・外国人がする必要がある届出や手続きの説明
・外国人からの相談・苦情などの連絡先
・外国人が医療を受けられる病院等の情報(外国人が十分理解できる言語で説明)
・防災・防犯に必要な知識、急病などの緊急時の対応に必要な知識
・労働法違反や入管法違反があった場合の外国人の法的保護に関する情報
⑤生活に必要な日本語の学習をする機会の提供
⑥外国人からの相談・苦情への適切な対応
⑦外国人と日本人との交流の促進を支援すること
⑧非自発的離職時の転職を支援すること
⑨当該外国人とその監督をする立場にある者との定期的な面談、労働法令違反などがあった場合の労働基準監督署などへの通報
業種別の「協議会」に加入する
特定技能で外国人を雇用する企業は、業種ごとに設置される「協議会」に加入することが義務付けられています。
要するに、特定技能制度が円滑に進んでいくよう、建設業界・介護業界・宿泊業界などの業界ごとに連携しようということです。
- 特定技能外国人の受入れに係る制度の趣旨や優良事例の周知
- 特定技能所属機関等に対する法令遵守の啓発
- 就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
- 地域別の人手不足の状況の把握・分析
- 人手不足状況,受入れ状況等を踏まえた大都市圏等への集中回避に係る対応策の検討・調整(特定地域への過度な集中が認められる場合の構成員に対する必要な要請等を含む)
- 受入れの円滑かつ適正な実施のために必要なその他の情報・課題等の共有・協議等等
特定技能で雇用できる外国人の求人方法
まず、海外にいる外国人で特定技能の在留資格を取得できるのは、「18歳以上」という条件があります。
「18歳以上」の条件に加えて①技能試験と日本語試験の合格者②技能実習2号を修了して帰国しているのどちらかの条件が必要です。
次に現状考えられる求人方法を見てみましょう。
求人情報サイトへ自社の求人を掲載する
特定技能に特化した求人情報サイトがチラホラ増えてきています。こういった求人情報サイトを利用するのも1つの手だと思います。※下記の記事で特定技能に特化した求人情報サイトのまとめ一覧を紹介しています。
ホームページで外国人向けの求人ページを作成する
自社のホームページに外国人向けの求人ページを作成すれば、技能実習2号を修了して帰国した外国人の方などから問い合わせという流れも考えられます。
また、留学経験がある外国人の方からの問い合わせなども考えられます。
ホームページは日本語・英語・中国語などで作成するのがベストだと思いますが、日本語をある程度話せることが前提条件にありますので、日本語の採用ページだけでも応募がくる可能性はあると思います。
人材派遣会社からの紹介
特定技能の新制度ができた事により、今後外国人と企業をつなぐ人材派遣会社などが増えると予想されます。
例えば、現在海外にある技能実習生の送り出し機関や、海外の日本語学校なども特定技能の在留資格で働くことを前提とした職業紹介事業を始めることが可能です。
登録支援機関を介した雇用
外国人の支援業務を行う「登録支援機関」ですが、登録支援機関が職業紹介事業も併せて行うような登録支援機関が登場してくると予想されます。
そういった登録支援機関から特定技能で働く外国人を紹介してもらうことも可能になってくると思われます。
「特定技能雇用契約」を外国人と締結
外国人の採用が決まったら雇用契約を締結します。特定技能の在留資格で働く外国人を雇用する為には、「特定技能雇用契約」という契約が必要です。在留資格認定証明書の交付申請前に雇用契約を交わす必要があります。
「特定技能雇用契約」は労働時間や従事する業務、報酬額など契約書に盛り込む内容が決まっています。
報酬額に関しては「日本人が従事する場合の報酬額と同等以上」で契約する必要がありますのでご注意ください。
「1号特定技能外国人支援計画」を作成
特定技能1号の在留資格の取得するには、在留資格認定証明書の交付申請の際に「支援計画書」を作成して添付する必要があります。
支援計画書の内容は、この記事の最初で説明した「外国人の支援内容」に沿って作成します。
職業上・日常生活上・社会生活上、外国人が安定・円滑に過ごせるような支援が求められています。
特定技能の「在留資格認定証明書交付申請」を行う
外国人と雇用契約を結び、支援計画書の作成などの準備が整ったら特定技能の在留資格認定証明書の交付申請を行います。
申請は、地方出入国在留管理局へ行います。手数料は無料で、申請から結果までの目安期間は「1~3ヵ月」です。
申請は、外国人本人は日本にいない為、受入れ企業の担当者が代理で行います。または、「申請取次者の認定を受けた行政書士」などに依頼します。
(行政書士にご依頼の際は、ぜひ当事務所にご依頼ください)
- 18歳以上であること
- 技能試験及び日本語試験に合格していること(技能実習2号を良好に修了した外国人は免除)
- 特定技能1号で通算5年以上在留していないこと
- 保証金を徴収されていないこと又は違約金を定める契約を締結していないこと
- 自らが負担する費用(家賃等)がある場合,内容を十分に理解していることなど
ビザの発行後に入国
無事に「在留資格認定証明書」が公布されたら、海外にいる外国人に郵送します。
海外にいる外国人は在留資格認定証明書とその他必要書類を持って在外公館(日本大使館又は総領事館など)にビザ(査証)の申請を行います。
外国人は在外公館からビザ(査証)が発行されたら日本に入国します。
入国の際に「上陸審査」があり、ビザがあるからといって必ず入国できるというものではありません。
無事上陸審査をパスしたら、外国人に在留資格が与えられ、晴れて入国という流れになります。
就労開始前に実施すること
実際に業務を開始する前に以下のことを行います。
- 受入れ機関等が実施する生活オリエンテーションの受講
- 住居地の市区町村等で住民登録
- 給与口座の開設
- 住宅の確保 など
特定技能の流れ「海外」から受け入れ・雇用するには?【完全版】のまとめ
いかがでしたか。
今後は特定技能での外国人雇用が増え、日本企業にとっては重要な人材確保手段としての位置づけになることが予想されます。
また、特定技能の在留資格では転職が可能な為、労働条件や職場環境の整備などの企業努力も求められるようになると予想されます。
特定技能制度の理解を深めて、今後の企業経営にお役立ていただければ幸いです。