在留資格「技能実習」とは?|外国人技能実習制度
技能実習制度は、以前から「出入国管理及び難民認定法」とその省令を根拠法令として実施されてきました。しかし、実習生の労働環境などが以前から問題視されており、技能実習制度の見直しに伴い新たに技能実習法とその関連法令が制定されました。これまで入管法令で規定されていた大部分が、この技能実習法令で規定されています。
技能実習法に基づく新たな外国人技能実習制度では、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るため、①技能実習計画の認定②監理団体の許可制などが設けられました。また、不正行為を行った管理団体や受入れ企業等への罰則が厳罰化されています。
上記のような制度の引き締めに対して、優良な実習実施者や監理団体に対しては、通常より拡大された受入れ人数枠や実習期間の延長などの制度の拡充も図られています。
技能実習制度の目的・趣旨は、我が国で培われた技能・技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、その開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度です。
つまり、開発途上国の外国人に日本の技術や知識を身につけてもらい、母国に帰った後にそれを役立ててもらうという制度趣旨です。ですから、技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と記されています。
技能実習制度の内容は、外国人の技能実習生が日本の企業や個人事業主などと雇用関係を結びます。そして母国では修得が困難な技術や知識の修得・習熟・熟達を図るものです。在留期間の最長は5年で、技術や知識の修得は技能実習計画に基づいて行われます。
技能実習以外の就労可能な在留資格
技能実習以外で就労が可能な在留資格には、以下のような在留資格があります。
「技能実習」 団体監理型と企業単独型の違い
技能実習生を受け入れる方法は、「団体監理型」と「企業単独型」の2つがあります。2つにはどのような違いがあるかを見てみましょう。
団体監理型
団体監理型:事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方法。
2016年末の時点では、団体監理型での技能実習生の受入れが96.4%となっています。対して企業単独型での受入れが3.6%と、技能実習生の大部分は団体監理型での受入れとなっています。
技能実習生は入国後に、日本語教育や技能実習生の法的保護に必要な知識等についての講習を受けます。その後、日本の企業等との雇用関係の下で、実践的な技術や知識の修得を行います。(企業単独型の場合は、講習の実施時期については入国直後でなくても可能です。)
企業単独型
企業単独型:日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を直接受入れて技能実習を実施する方法
主に大企業が技能実習生を受入れる場合に使われます。
在留資格「技能実習」1号・2号・3号の違いと在留期間について
在留資格「技能実習」の区分は、企業単独型と団体監理型の受入れ方法別に下記の3つに分類されています。
①入国後1年目の技能等を修得する活動(技能実習1号)
②2・3年目の技能等に習熟するための活動(技能実習2号)
③4年目・5年目の技能等に熟達する活動(技能実習3号)
在留資格「技能実習」1号とは
技能実習の1年目は「技能実習1号」となり、企業単独型の1年目は在留資格「技能実習1号イ」となります。団体監理型の1年目は在留資格「技能実習1号ロ」となります。
技能実習1号の特徴
☑2号・3号とは異なり、対象職種自体には制限がない
☑座学で講習を原則2ヵ月間実施する必要がある(講習の間は、企業等と雇用関係が成立していない)
在留資格「技能実習」2号とは
2年目・3年目は「技能実習2号」となり、企業単独型の2年目・3年目は在留資格「技能実習2号イ」となります。団体監理型の2年目・3年目は在留資格「技能実習2号ロ」となります。
※技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能ビザの要件である「技能試験と日本語試験」が免除されます。
技能実習2号の特徴
☑技能実習1号から技能実習2号へ移行するためには、技能実習生本人が所定の技能評価試験(学科と実技)に合格していることが必要です。
☑移行が可能な対象職種に制限がある
在留資格「技能実習」3号とは
4年目・5年目は「技能実習3号」となり、企業単独型の4年目・5年目は在留資格「技能実習3号イ」となります。団体監理型の4年目・5年目は在留資格「技能実習3号ロ」となります。
技能実習3号の特徴
☑技能実習2号から技能実習3号へ移行するためには、技能実習生本人が所定の技能評価試験(実技)に合格していることが必要です。
☑移行が可能な対象職種に制限がある
なお、第3号技能実習を実施できるのは、主務省令で定められた基準に適合していると認められた、優良な監理団体・実習実施者に限られます。具体的な基準は、以下のリンクのP12〜14をご参照ください。
在留資格「技能実習」の対象職種について
技能実習生を受入れる「1年目」(技能実習1号)では、「対象職種自体」には制限がありません。しかし、以下のような基準がある為、どんな職種でもOKという訳ではありません。
※2年目以降の技能実習2号や3号への移行には職種の制限があります。
技能実習の内容に関する基準
☑同一の作業の反復のみによって修得できるものではないこと。
☑第2号・第3号については移行対象職種・作業(主務省令別表記載の職種及び作業)に係るものであること。
☑技能実習を行う事業所で通常行う業務であること。
☑移行対象職種・作業については、業務に従事させる時間全体の2分の1以上を必須業務とし、関連業務は時間全体の2分の1以下、周辺業務は時間全体の3分の1以下とすること。
☑技能実習生は本邦において従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験等を有し、又は技能実習を必要とする特別の事情があること(団体監理型のみ)。
☑帰国後に本邦において修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること。
☑第3号の技能実習生の場合は、第2号修了後に一か月以上帰国していること。
☑技能実習生や家族等が、保証金の徴収や違約金の定めをされていないこと(技能実習生自身が作成する書面によって明らかにさせる)。
☑第1号の技能実習生に対しては、日本語・出入国や労働関係法令等の科目による入国後講習が行われること。
☑複数職種の場合は、いずれも2号移行対象職種であること、相互に関連性があること、合わせて行う合理性があること。
技能実習法とは?
2017年11月1日に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)が施行されました。
この「技能実習法」は、それまでの入管法令によって規定されていた「技能実習」に係る種々の規定を取りまとめ、さらに技能実習制度自体の改革を図る為に制定された法律です。
外国人技能実習機構とは?
外国人技能実習機構は、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律に基づき、外国人の技能・技術又は知識の習得・習熟又は熟達に関し、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材を通じた開発途上国地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的として設立されました。
外国人技能実習機構の業務
☑技能実習計画の認定
☑実習実施者・監理団体への報告要求、実地検査
☑実習実施者の届出の受理
☑監理団体の許可に関する調査
☑技能実習生に対する相談・援助
☑技能実習生に対する転籍の支援
☑技能実習に関する調査・研究など
技能実習計画の認定申請とは?
技能実習を行わせようとする者(実習実施者)は技能実習計画を作成します。その後、作成した技能実習計画が適当である旨の認定を外国人技能実習機構から受ける必要があります。
技能実習計画に記載しなければならない事項や申請の際の添付書類は、技能実習法及びその関係法令で規定されています。
技能実習計画は、技能実習生ごとに作成します。また、技能実習1号・2号・3号のそれぞれの区分に応じて認定を受ける必要があります。
特に第3号技能実習計画については、実習実施者が「技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合していること」が必要です。
なお、団体監理型の場合、実習実施者は技能実習計画を作成するにあたり、実習監理を受ける監理団体の指導を受ける必要があります。
そして、実習実施者は認定を受けた技能実習計画に従って技能実習を行わせなければなりません。仮に違反があった場合には、改善命令や認定の取消しの対象になります。
技能実習計画の認定申請について(外国人技能実習機構HP「実習実施者の皆様へ」)
実習実施者の届け出
実習実施者が技能実習を開始したときは、遅滞なく開始した日、その他主務省令で定める事項を外国人技能実習機構に届け出なければなりません。
技能実習「優良な実習実施者」とは?
一定の基準をクリアした実習実施者(企業等)には、技能実習生の受入れに際して、優遇処置が用意されています。
優良な実習実施者に認定された場合のメリット
①技能実習生の受入れ枠の拡大
優良基準に適用すると、「基本受入れ人数枠」の2倍の受入れが可能になります。
②実習期間が3年から5年に延長
第2号技能実習を修了した技能実習生が、さらに技能等を熟達させるために、第3号技能実習(2年間)に移行できます。(在留期間の延長)
移行するためには、実習実施者(企業等)の優良認定と同時に、技能実習生本人が技能検定3級等(専門級)の実技試験に合格している必要があります。
※第2号技能実習終了前には、第3号移行の有無に関わらず、専門級3級の受験は必要となり、第3号移行の場合は合格が必須となります。
優良な実習実施者に認定されるための要件
以下の表で 6 割以上の点数(120 点満点で 72 点以上)を獲得した場合に「優良」な実習実施者の基準に適合す ることとなります。
優良な実習実施者の要件
☑①技能等の修得等に係る実績(70点)
・過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率等※
3級2級程度については、新制度への移行期は合格実績を勘案
☑②技能実習を行わせる体制(10点)
・直近過去3年以内の技能実習指導員、生活指導員の講習受講歴
☑③技能実習生の待遇(10点)
・第1号実習生の賃金と最低賃金の比較 ・技能実習の各段階の賃金の昇給率
☑④法令違反・問題の発生状況(5点※違反等あれば大幅減点)
・直近過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合
・直近過去3年以内に実習実施者に責めのある失踪の有無
☑⑤相談・支援体制(15点)
・母国語で相談できる相談員の確保
・他の機関で実習継続が困難となった実習生の受入実績等
☑⑥地域社会との共生(10点)
・実習生に対する日本語学習の支援
・地域社会との交流を行う機会
・日本文化を学ぶ機会の提供
リンク:「要件の詳細」は厚生労働省HPの13ページをご参照下さい。
監理団体の許可申請について
監理事業を行おうとする者は、外国人技能実習機構へ監理団体の許可申請を行い、主務大臣の許可を受けなければなりません。監理団体として満たさなければならない要件は、技能実習法令で定められています。
監理団体の許可には、特定監理事業と一般監理事業の2つの区分があります。特定監理事業の許可を受ければ第1号から第2号まで、一般監理事業の許可を受ければ第1号から第3号までの技能実習に係る監理事業を行うことができます。
区分 | 監理できる技能実習 | 許可の有効期間 |
---|---|---|
特定監理事業 | 技能実習1号、技能実習2号 | 3年又は5年※ |
一般監理事業 | 技能実習1号、技能実習2号、技能実習3号 | 5年又は7年※ |
※前回許可期間内に改善命令や業務停止命令を受けていない場合
監理団体の許可基準
監理団体の主な許可基準は以下のとおりです。(職種によっては事業所管大臣の告示により許可基準が追加・変更される場合があります。)
①営利を目的としない法人であること
商工会議所・商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人、公益財団法人等
②監理団体の業務の実施の基準(下記Ⅰ〜Ⅳが代表例)に従って事業を適正に行うに足りる能力を有すること
Ⅰ.実習実施者に対する定期監査(頻度は3か月に1回以上、監査は以下の方法によることが必要)
ア.技能実習の実施状況の実地確認
イ.技能実習責任者及び技能実習指導員から報告を受けること
ウ.在籍技能実習生の4分の1以上との面談
エ.実習実施者の事業所における設備の確認及び帳簿書類等の閲覧
オ.技能実習生の宿泊施設等の生活環境の確認
Ⅱ.第1号の技能実習生に対する入国後講習の実施
Ⅲ.技能実習計画の作成指導
・指導に当たり、技能実習を実施する事業所及び技能実習生の宿泊施設を確認
・適切かつ効果的に実習生に技能等を修得させる観点からの指導は、技能等に一定の経験等を有する者が担当
Ⅳ.技能実習生からの相談対応(技能実習生からの相談に適切に応じ、助言・指導その他の必要な措置を実施)
③監理事業を健全に遂行するに足りる財産的基礎を有すること
④個人情報の適正な管理のため必要な措置を講じていること
⑤外部役員又は外部監査の措置を実施していること
⑥基準を満たす外国の送出機関と、技能実習生の取次に係る契約を締結していること
⑦①〜⑥のほか、監理事業を適正に遂行する能力を保持していること
※下記を満たさない場合は、監理事業を適正に遂行する能力があるとは判断されません。
・監理費は、適正な種類及び額の監理費をあらかじめ用途及び金額を明示したうえで徴収すること(法第28条)
・自己の名義をもって、他人に監理事業を行わせてはならないこと(法第38条)
・適切な監理責任者が事業所ごとに選任されていること(法第40条)
※監理責任者は事業所に所属し、監理責任者の業務を適正に遂行する能力を有する常勤の者でなければなりません。また、過去3年以内に監理責任者に対する養成講習を修了した者でなければなりません
⑧<一般監理事業の許可を申請する場合>優良要件に適合していること
監理団体の許可申請について(外国人技能実習機構HP「監理団体の皆様へ」)
「優良な監理団体」の要件
以下の表で 6 割以上の点数(120 点満点で 72 点以上)を獲得した場合に「優良」な監理団体の基準に適合す ることとなります。
☑①実習の実施状況の監査その他の業務を行う体制(50点)
・監理事業に関与する常勤の役職員と実習監理を行う実習実施者の比率
・監理責任者以外の監査に関与する職員の講習受講歴等
☑② 技能等の修得等に係る実績(40点)
・過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率等
※3級2級については、新制度への移行期は合格実績を勘案
☑③法令違反・問題の発生状況(5点※違反等あれば大幅減点)
・直近過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合
☑④相談・支援体制(15点)
・他の機関で実習が困難となった実習生の受入に協力する旨の登録を行っていること
・他の機関で実習継続が困難となった実習生の受入実績等
☑⑤地域社会との共生(10点)
・実習実施者に対する日本語学習への支援
・実習実施者が行う地域社会との交流を行う機会
・日本文化を学ぶ機会の提供への支援
「優良」な実習実施者・監理団体について
実習実施者が第3号技能実習を行うには、外国人技能実習機構への技能実習計画の認定申請の際に「優良要件適合申告書(実習実施者)」を提出し、技能等の修得等をさせる能力につき高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合している実習実施者として、外国人技能実習機構から優良認定を受ける必要があります。
また、監理団体が第3号技能実習の実習監理を行うには、外国人技能実習機構への監理団体の許可申請の際に「優良要件適合申告書(監理団体)」を提出し、技能実習の実施状況の監査その他の業務を遂行する能力につき高い水準を満たす監理団体として、主務大臣から「一般監理事業」の区分での団体許可を受ける必要があります。
※「優良要件適合申告書」における合計得点が満点の6割以上であれば、優良な実習実施者・監理団体の基準に適合することになります。
※団体監理型で第3号技能実習を行う場合は、監理団体と実習実施者が共に上記「優良」である必要があります
まとめ
技能実習制度について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今後は企業様でも在留資格「技能実習」で外国人を受入れる機会が増えると思いますので、技能実習制度のルールを正しく覚える事が大切です。