在留資格制度について分かり易く解説しています。在留資格制度の「入門編」としてこの記事を読んでいただければ、在留資格に関する大まかな全体像が理解できるような記事になっています。
このような疑問に答えます。
・在留資格制度に関する知識を身に付けたい。
・在留資格とビザの違いがよくわからない。
・在留資格にはどんな種類があるのか知りたい。
在留資格とは
在留資格とは、「外国人」が日本に「入国・在留」するために必要な資格(許可)のことです。車を運転する為には「運転免許」という資格(許可)が必要なように、外国人が日本で勉強したり仕事をしたりする為には、在留資格という資格(許可)が必要になります。
後で説明しますが、世間一般では在留資格のことを「ビザ」と呼ぶことが多いですが、厳密には「ビザ」と「在留資格」は違うモノです。
在留資格の種類
上記で説明した在留資格は、「30以上」の種類があります。外国人が日本で行う活動(勉強する・働く・日本人と結婚するなど)によって、取得する在留資格は変わります。
それぞれの在留資格には、取得する為の条件が決められています。逆に言えば、どの在留資格の条件にも合わない外国人の方は、日本に来て働きたいと思っても日本で働くことはできません。
活動内容系の在留資格
外国人が日本で行う活動別の在留資格の種類です。同じ働くにしても、仕事の内容などによって外国人が取得する在留資格の種類が変わります。また、「働く」ではなく「活動」としているのは、日本で勉強する為の「留学」や、外国人旅行者の為の「短期滞在」といった在留資格も含まれているからです。
※この表の「就労可能」とは、どんな仕事でも行えるという意味ではなく、その在留資格で決められた仕事のみを行えるということです。
在留資格名 | 該当する人の例 | 就労の可否 |
---|---|---|
外交 | 外国政府の大使や総領事など | 個別確認が必要 |
公用 | 外国政府の大使館や領事館の職員など | 個別確認が必要 |
教授 | 大学の教授など | 就労可能 |
芸術 | 画家や作曲家など | 就労可能 |
宗教 | 外国の宗教団体の宣教師など | 就労可能 |
報道 | 外国の報道機関の記者やカメラマンなど | 就労可能 |
高度専門職 | ポイント制による高度人材 | 就労可能 |
経営・管理 | 会社の経営者や管理者 | 就労可能 |
法律・会計業務 | 弁護士や公認会計士など | 就労可能 |
医療 | 医者・歯科医師・看護師 | 就労可能 |
研究 | 研究者 | 就労可能 |
教育 | 中学校や高校の語学教師など | 就労可能 |
技術・人文知識・国際業務 | 技術者・通訳・デザイナーなど | 就労可能 |
企業内転勤 | 外国の会社からの転勤者 | 就労可能 |
介護 | 介護福祉士 | 就労可能 |
興行 | 俳優・歌手・プロスポーツ選手など | 就労可能 |
技能 | コック・パイロットなど | 就労可能 |
技能実習 | 技能実習生 | 就労可能 |
文化活動 | 日本文化の研究者など | 原則就労不可 |
短期滞在 | 観光や会議参加者など | 原則就労不可 |
留学 | 留学生 | 原則就労不可 |
研修 | 研修生 | 原則就労不可 |
家族滞在 | 在留外国人が扶養する配偶者・子供 | 原則就労不可 |
特定活動 | 外交官等の家事使用人、その他多数 | 個別確認が必要 |
2019年4月に新設された在留資格「特定技能」については、下記記事でわかりやすく解説しています。
身分系の在留資格
上記の活動内容に基づく在留資格の他に、外国人の身分に基づく在留資格があります。身分系の在留資格は以下の4つです。
身分系の在留資格の特徴は、就労の制限が無いということです。身分系の在留資格を持つ外国人は、違法な仕事以外であれば、どんな仕事をしてもOKです。雇用形態も正社員に限らず、アルバイト・派遣・パートタイマーなど様々な雇用形態で働くことが可能です。
ですから、例えばコンビニでのアルバイトや、スーパーの店員といった、他の在留資格では基本的に働くことができない業種でも、身分系の在留資格を持つ外国人であれば就労が可能です。
在留資格 | 該当する人の例 |
永住者 | 永住の許可を受けた者 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者・子・特別養子 |
永住者の配偶者等 | 永住者の配偶者など |
定住者 | 日系3世・中国在留邦人など |
ビザ(査証)とは
ビザとは、外国人が日本に来る前に、母国にある「日本大使館や領事館」で取得するモノです。ビザは正式には「査証(さしょう)」と呼ばれ、外国人が日本に入国する為には原則としてビザの取得が必要です。
ビザには、①外国人が持っているパスポートが有効であることの確認②入国させても問題なしという「推薦」の役割りがあり、一般的に上記画像のようなスタンプやシールがパスポートに貼り付けされます。
ここで注意が必要なのは、ビザ(査証)が取得できたからといって、必ず日本に入国できるとは限らないという点です。最終的に日本への入国を許可するかの判断は、空港などの入国審査官の審査を経て判断されます。とはいえ、ほとんどの場合はビザ(査証)の発給があれば日本に入国できます。
在留資格とビザの違い
次に、在留資格とビザの違いを、外国人が日本に入国するまでの基本的な流れに沿って見てみましょう。
以下、在留資格(厳密には在留資格認定証明書)とビザの比較表です。
在留資格認定証明書 | ビザ | |
申請場所 | 日本の入管 | 母国にある日本大使館や領事館 |
申請者 | 雇用先企業の担当者等 | 外国人本人 |
役割り | 外国人が日本に在留する資格 | 旅券の有効性の確認と入国の推薦 |
関係省庁 | 法務省 | 外務省 |
ここまでで説明したように、本来は在留資格とビザ(査証)は「別のモノ」です。しかし、一般的に在留資格=ビザという認識で世間には定着しています。
その証拠に、プロである入管の職員も、外国人に対しては在留資格と言わずにビザという言葉を使う場面がよく見られます。ですから、在留資格とビザは本当は違うものだと理解する程度で、日常的にはビザと呼んでも差し支えはありません。
ビザ(査証)の免除
上記で説明したビザ(査証)には、ビザ(査証)の免除という制度があります。例えば、アメリカ人が日本に旅行をする場合、アメリカにある日本大使館等に出向いてビザ(査証)の発給を受ける必要はありません。
これは、アメリカと日本の間で、相互にビザ(査証)を免除するという取り決めがされているからです。日本は60以上の国・地域との間でビザ(査証)免除の取り決めをしており、観光・会議・商用・知人訪問などの場合にビザ(査証)の取得が不要となります。
在留カードとは
在留カードとは、正規に日本に「中長期間」在留する外国人に交付されるカードです。旅行などで来日する外国人には交付されません。在留カードには、氏名,生年月日,性別,国籍・地域,住居地,在留資格,在留期間,就労の可否などが記載されています。
在留カードには、外国人が日本に適法に在留していることを証明する「証明書」の役割りがあり、外国人には在留カードを携帯する義務があります。
在留カードについては、以下の記事で詳しく解説しています。
在留資格に関する手続き
外国人の在留資格に関する手続きは複数あります。全てではありませんが、一般的な手続きについて順番に分かり易く紹介します。
在留資格認定証明書交付申請
外国人が新しく日本に来る時の手続きです。
日本に入国を希望する外国人又は代理人(雇用先企業の人事担当者など)は、地方出入国在留管理局に申請書を提出することにより、事前に在留資格の認定を受けることができます。この認定を受けると「在留資格認定証明書」が発行されます。
「在留資格認定証明書」があると、ビザ(査証)の申請の際や、入国時の日本の空港での上陸審査の際に、審査がスムーズになります。
この在留資格認定証明書の交付申請時には、「在留資格の該当性」や「基準適合性」などの面で審査が行われます。在留資格の該当性や基準適合性については、以下の記事で詳しく解説しています。
在留資格変更許可申請
既に日本にいる外国人が、自分の持っている在留資格から別の在留資格に変更する時の手続きです。
例えば、留学という在留資格を持つ外国人留学生が、学校卒業後に日本で就職する場合は在留資格の変更が必要です。この場合に変更する在留資格で一般的なものに、「技術・人文知識・国際業務」や、「特定技能」といった在留資格があります。
また、既に日本で働いている外国人の方が日本人と結婚をした場合にも、在留資格の変更を行う場合が多いです。この場合は、就労系の在留資格(例えば「技術・人文知識・国際業務」)から、日本人の配偶者等という在留資格に変更申請を行います。
在留資格変更許可申請では、在留資格の該当性や基準適合性といった面での審査の他に、今まで日本に住んでいた期間の「在留状況」といった面からも審査が行われます。在留状況には、「在留資格に応じた活動を行ってきたか」や、「納税義務を履行しているか」「入管法で決められた届出をしているか」などがあります。
つまり、在留資格変更をするまでの間、日本の法律等をしっかり守って生活をしていたかという面を審査されるということです。
在留期間更新許可申請
既に日本にいる外国人が、自分の持っている在留資格の有効期限(在留期間)を更新する時の手続きです。
外国人が在留資格の許可を受ける時には、1年や3年といった在留期間が決められます。この在留期間を超えて日本にいたい場合は、在留期間が切れる前に在留期間の更新許可申請を行います。
在留期間更新許可申請では、主に今までの日本での在留状況を審査されます。在留状況については、在留資格変更で触れた内容になります。(就労系の在留資格の場合で、途中で転職をした場合は、転職先での業務内容や給料の額、転職先の会社の財務状況なども併せて審査が行われます)
永住許可申請
既に日本にいる外国人が、自分の持っている在留資格から「永住者」の在留資格に変更する時の手続きです。
永住許可申請も在留資格変更の一種ですが、永住権を取得すると日本での活動や在留期間の制限がなくなるという特性上、他の在留資格よりも厳しい審査基準が設けられています。
永住許可申請では、「素行が善良であること」「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」「その者の永住が日本国の利益に合すると認められること」といった面から審査が行われます。
永住許可申請については、以下の記事で解説しています。
就労資格証明書交付申請
就労系の在留資格を持つ外国人が、就労資格証明書の交付を受ける時の手続きです。
就労資格証明書は、主に外国人の方が転職をする時に使います。就労資格証明書には、転職先の会社で行う業務内容が外国人が持つ在留資格に該当することを証明する意味合いがあります。
就労資格証明書を転職時に取得しておくことで、外国人本人は安心して転職先の会社で働くことができ、転職先の会社側も安心して外国人を雇用することができます。
就労資格証明書交付申請では、転職先の会社での業務内容や給料の額、転職先の財務状況などの面で審査が行われます。
資格外活動許可申請
自分の持っている在留資格では認められていない「収入を伴う活動」を認めてもらう場合に必要な手続きです。
例えば、外国人留学生がアルバイトをする場合には、この資格外活動許可を得る必要があります。留学生が資格外活動許可を得てアルバイトをする場合は、1週間で28時間以内と制限が設けられています。
資格外活動許可申請では、現在持っている在留資格の活動を邪魔しない範囲内で、かつ、資格外活動が相当かどうかといった面で審査が行われます。(留学生であれば、学業の邪魔にならないか等)
再入国許可申請
現在持っている在留資格の在留期間満了前に再び入国する意思を持って、一時的に日本から出国する場合に行う手続きです。
再入国許可申請では、「再入国許可することが不適当な者でないか」といった面で審査が行われます。
在留資格に関する届出
日本では、外国人本人や外国人を雇用する企業に様々な届出を義務付けています。
届出義務を守っていないと、在留期間の更新ができなかったり、新たな外国人を雇用できなくなったりする可能性がありますので、在留資格に関する届出はしっかり理解しておく必要があります。
外国人本人がする届出
外国人本人が届出を行う場面には、以下のようなものがあります。以下の外国人本人がする届出は、「義務」です。
会社がする届出
外国人を雇用する企業が届出を行う場面には、以下のようなものがあります。
会社がする届出は少し複雑です。まず、就労系の在留資格(特定技能以外)を持つ外国人を雇用・退職した場合、入管法上での届出は「努力義務」です。※特定技能の在留資格を持つ外国人が退職した場合の届出は「義務」です。
ちなみに、特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用する場合は、在留資格変更許可申請という申請をする必要がある為、届出は必要ありません。
次に、上記の入管法上での届出の他に、「雇用対策法」でも届出に関する規定があり、これは「義務」です。内容は以下の通り。
外国人を雇用する事業主は、外国人の雇入れ・離職の際に、その氏名・在留資格などについて確認しハローワークへ届け出ること。(労働施策総合推進法第28条)
この規定は、就労系以外の永住者や日本人の配偶者といった在留資格を持つ外国人を雇用する場合にも適用されます。※在留資格「外交」「公用」「特別永住者」は対象外。
【結論!】
つまり、外国人の雇用・離職時に、ハローワークへの届出は必須。入管への届出は特定技能を除き、努力義務ということになります。さらに、永住者や日本人の配偶者といった外国人の雇用・離職時は、入管への届出は不要ということになります。
まとめ
在留資格について種類やビザとの違いなどに焦点を当てて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
本記事を正しい理解にお役立ていただければ幸いです。