こんな疑問に答えます。
現在、日本の永住権を取得する条件はかなり難しくなっており、以前よりも不許可になる割合が高くなっています。ですから、永住権取得の条件や、自分が条件をクリアしていると証明するための書類について詳しく理解する必要があります。
そこでこの記事では、日本の永住権をとるメリットから取得するための条件や提出書類までを分かりやすく解説しています。また、永住権をとった後の注意点も併せて解説しています。
日本の永住権とは?
日本の永住権とは、外国人が「在留期間を制限されることなく」日本に永住できる権利のことです。
日本には在留資格制度があり、永住権を取得するための手続きのことを「永住許可申請」といいます。また、永住許可申請が許可された外国人には「永住者」という在留資格が与えられます。
つまり、「日本で永住権を取得する=永住者という在留資格を取得する」ということになります。
なお、永住権は外国人が「国籍はそのまま」で日本に永住することであり、外国人が日本の国籍を取得する帰化とは色々な面で違いがあります。
よく比較される、「永住者」と「特別永住者」「定住者」「帰化」の違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
≫在留資格「永住者」とは?【特別永住者・定住者・帰化との違い】
日本の永住権を取得するメリット
次に、外国人が日本の永住権を取得するメリットを5つ紹介します。
就労制限がない
日本の永住権を取得すると「就労の制限」が無くなります。
通常、日本の在留資格にはそれぞれ「行ってOKな活動」が決められています。就労系の在留資格であれば業務内容が決まっていますし、留学生であればパチンコ屋・麻雀店・キャバクラなどでアルバイトをすることはNGです。
このような「就労の制限」が永住権を取得すると無くなりますので、適法な仕事であればどんな仕事でもできるようになるというメリットがあります。
ちなみに、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった在留資格も永住者と同じく就労の制限はありませんが、永住者と違い在留期間の制限はあります。
在留期間がない
日本の永住権を取得すると「在留期間の制限」が無くなります。
永住権を取得すると在留期間の制限を受けないため、今まで行っていた在留期間の更新申請をする必要がなくなります。
永住者以外の在留資格だと在留期間の更新が不許可になるリスクがあるため、この「在留期間の制限を受けない」という点は大きなメリットです。
社会的な信用が上がる
日本の永住権を取得すると「社会的な信用」が上がります。
永住権を取得すると日本での信用度が上がるため、「クレジットカードを作る時の審査」や「家を買う時の住宅ローンの審査」などに通りやすくなります。
また、永住者は長期雇用が見込めるため、職場等の条件面で他の在留資格を持つ外国人より優遇されるケースもあります。
日本での起業が簡単
日本の永住権を取得すると「起業」が簡単になります。
まず、永住権を取得することで起業の時の銀行融資を受けやすくなります。永住者には、「在留期間の制限が無い」や「日本での生活基盤がある」というプラス材料があるため、銀行も融資をしやすくなります。
また、永住者が起業をする場合は「経営・管理」の在留資格に変更する必要がありません。経営・管理の在留資格審査は現在厳しくなっていますので、これも永住権を取得するメリットと言えます。
参考までに、「日本人の配偶者等」や「定住者」などの在留資格も起業の時に在留資格を変更する必要はありません。
離婚しても在留資格がそのまま
日本の永住権を取得すると、離婚をしても在留資格変更の必要がなくなります。
「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の在留資格は離婚をした場合に在留資格を変更する必要があります。
就労系の在留資格や定住者などへの変更になりますが、手間・時間・お金がかかります。また、変更する在留資格の条件をクリアしている必要がありますので、申請が不許可になるリスクもあります。
こういった、「離婚をした時の手間やリスク」が永住権の場合はありません
永住権を取得するデメリットはある?
永住権を取得するデメリットは、ほとんどありません。
永住者は他の在留資格と比べるとメリットばかりなので、日本に長く住むのであれば永住権を取得するのが1番です。
参考までに、在留資格「高度専門職」の優遇措置、親の呼び寄せの条件を満たさなくなるというデメリットはあります。
日本の永住権を取得する条件
次に、日本の永住権を取得するための条件を解説します。大きく分けると以下の3点です。
- 素行が善良であること
- 独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること
- 日本にも利益があること
なお、日本人・永住者又は特別永住者の配偶者や子である場合は、「3」の条件のみをクリアすればOKとされています。
1〜3の条件について順番に解説します。
素行が善良であること
1つ目の条件は、「素行が善良であること」です。
要するに「日本の法律を守って生活していること」です。
「法律を守って」には以下の2種類のパターンがあります。
1回でNGなケース
日本の法令に違反して「懲役・禁固・罰金・拘留・科料」に1度でも課された場合はNGです。例えば、人を殴って罰金刑となった場合などです。
懲役と禁固の場合は、刑期満了後10年を経過(執行猶予の場合は執行猶予期間満了後5年を経過)すると永住権の審査上リセットされます。
罰金・拘留・科料の場合は、罰金等の支払い後5年を経過すると永住権の審査上リセットされます。
何度かあるとNGなケース
交通違反(車の運転等)が何度もある場合はNGです。例えば、駐車違反・信号無視・スピード違反で反則金を支払った場合などです。
交通違反の明確な規定はありませんが、目安は過去5年で5回以下なら許可の可能性があるといった感じです。ただし、例えば4回しか交通違反がなくても、永住権申請の直近で立て続けに交通違反をしている場合などは不許可の可能性が高くなります。
また、交通違反でも飲酒運転やひき逃げ等で罰金刑を受けた場合などは、「1回でNGなケース」に該当します。
独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること
2つ目の条件は、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能があること」です。
要するに「日本で安定した生活ができる給料をもらっていこと」です。
具体的な給料の額は規定されていませんが、年収300万円以上が実務上の目安です。扶養する家族(夫・妻・子供など)がいる場合は、1人あたり80万円程度を上乗せした額が目安になります。
例えば、永住権申請をする人に奥さんと子供が1人いる場合は、「300万円+80万円+80万円=460万円」が年収の目安になります。
この年収については、変更前の在留資格が「日本人・永住者の配偶者」と「高度人材(70点以上)」の場合は過去3年分、就労系の在留資格や定住者、家族滞在の場合は過去5年分を提出書類で確認されます。
また、転職は永住権申請でマイナス評価になる可能性があります。特に永住権申請の直近1年以内の転職や、短期間に何回も転職している場合は注意が必要です。ただし、キャリアアップの為の転職(給料が上がるなど)の場合は説明次第でマイナス評価にならない場合もあります。
日本にも利益があること
3つ目の条件は、「日本にも利益があること」です。
要するに「法律を守って生活し、税金等をしっかり支払うこと」です。
「日本にも利益があること」は以下の4つのポイントから判断されます。
日本に長く住んでいる
原則は、「引き続き10年以上(10年のうち、就労資格か居住資格で5年以上)日本に住んでいること」です。
例えば、留学の在留資格で2年間学校に行き、卒業後に技術・人文知識・国際業務の在留資格で8年間働いた場合などです。
この「10年〜」の条件ですが、以下の在留資格ではハードルが下がります。
日本人の配偶者等
日本人・永住者及び特別永住者の配偶者の場合は、「実体を伴った結婚生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に住んでいること」が条件となります。
日本人・永住者及び特別永住者の実子等の場合は、「1年以上日本に継続して住んでいること」が条件となります。
定住者
定住者の場合は、「5年以上継続して日本に住んでいること」が条件となります。
高度人材
高度専門職ポイント70点以上の高度人材外国人の場合は、「3年以上継続して日本に住んでいること」が条件となります。
高度専門職ポイント80点以上の高度人材外国人の場合は、「1年以上継続して日本に住んでいること」が条件となります。
なお、在留資格を高度専門職にしていなかった場合でも、永住権申請の「3年or1年前」の時点を基準として「70点or80点のポイント」があったことを証明できれば、上記の優遇処置を受けることができます。
納税義務等を適正に履行している
まず、所得税や住民税などの税金を適正に支払いっている必要があります。提出書類から以下の税金について確認されます。
次に、年金保険料と健康保険料を適正に支払っている必要があります。また、入管法で義務付けられている届出を適正に行っている必要もあります。
今持っている在留資格の期間
原則、今持っている在留資格の一番長い在留期間が与えられている必要があります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の場合、在留期間は「5年・3年・1年・3か月」なので、5年の在留期間をもらっている人が条件をクリアしていることになります。
ただし、現状(当面の間)は「3年以上」の在留期間をもらっていれば条件をクリアしていると入管で取り扱われることになっています。
健康状態など
「公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと」が必要です。
具体的には、エボラ出血熱やペストなどの感染症患者や、大麻や覚せい剤などの薬物中毒者はNGということです。
永住権を取得するまでの流れ
永住権を取得するための申請の流れを解説します。
条件に合うか確認
まずは、この記事で解説した条件を自分がクリアしているかを確認します。
永住権申請の条件は明確に規定されていないものが多く、また、個別の状況によって結果が左右されるケースもあります。
この記事で紹介している条件についても「目安」のものがありますので、自分で判断がつかない場合は行政書士に相談してください。
保証人を探す
永住権の申請では身元保証人が必要です。
日本人・永住者の配偶者から変更する場合は配偶者に身元保証人になってもらいます。
就労系の在留資格や定住者などは友達・知人・勤務先の社長などに身元保証人になってくれるようお願いする必要があります。
身元保証人になってほしいと頼む場合(特に日本人に頼む場合)は、上手に頼まないと断られてしまうケースが多々ありますので注意してください。
永住権申請の身元保証人の条件や頼み方のコツなどは以下の記事が参考になります。
≫【永住ビザ申請】身元保証人の頼み方と頼まれた時の責任範囲は?
提出書類を集める
入管への提出書類は今持っている在留資格によって以下の4パターンに分かれます。
なお、「就労系の在留資格や定住者、高度人材などから永住権申請をする場合」は理由書が必要です。永住権申請の理由書の書き方については以下の記事を参考にしてください。
≫【永住許可申請の理由書】書き方とプロが使う例文(記入例)を公開!
日本人の配偶者等の提出書類
「日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・特別永住者の配偶者等」の在留資格の人が永住権申請をする場合の入管への提出書類は、大きく分けると全部で11種類です。
このパターンのみ提出書類に「理由書」がありません。「日本人や永住者の配偶者と一緒に自分も日本に永住したい」という理由で永住権申請をすることがわざわざ理由書で説明しなくても分かるからです。
具体的な提出書類については以下の記事で解説しています。
≫【永住権申請】外国人配偶者から変更する時の必要書類と条件を解説!
定住者の提出書類
「定住者」の在留資格の人が永住権申請をする場合の入管への提出書類は、大きく分けると全部で14種類です。
具体的な提出書類については以下の記事で解説しています。
≫定住ビザから永住ビザへ変更申請【必要書類と条件をプロが解説!】
就労ビザの提出書類
「就労系の在留資格又は家族滞在」の在留資格の人が永住権申請をする場合の入管への提出書類は、大きく分けると全部で14種類です。
具体的な提出書類については以下の記事で解説しています。
≫就労ビザから永住権申請をする時の必要書類【わかりやすく解説!】
高度人材の提出書類
「高度専門職」の在留資格の人が永住権申請をする場合の入管への提出書類は、大きく分けると全部で15種類です。
具体的な提出書類については以下の記事で解説しています。
≫高度人材の永住権申請書類【ポイント80点なら1年で申請可能!】
入管へ申請する
申請先の入管は、「申請人の住居地を管轄する地方出入国在留管理局」です。
永住許可申請の標準処理期間は「4か月」となっていますが、実務上「6か月〜10か月」の間ぐらいが多いです。
永住許可の審査中に今の在留資格の在留期間が過ぎる場合は、事前に別で在留期間更新許可申請をする必要があるので、永住許可の申請は余裕を持って早めに行うことをお勧めします。
なお、永住が許可された場合は手数料8,000円が必要です。
永住権取得後の注意
無事に日本で永住権を取得できた後も2つ気をつける事があります。
在留カードの更新
在留資格「永住者」には在留期間がありませんので在留期間を更新する手続きは不要です。
しかし、永住者が持つ「在留カードには7年の有効期間がある」ので、在留カードの有効期間を更新する手続きは行う必要があります。
永住者の在留カード更新手続きについては以下の記事で詳しく解説しています。
≫【永住ビザ更新】7年ごとに在留カード更新が必要!【必要書類あり】
永住権の取り消し
せっかく取得した永住権ですが、注意をしないと取り消しになる場合があります。
「うっかりして永住権が取り消しになってしまった」ということが無いように、以下の記事を参考にして十分に気をつけてください。
≫【要注意!】永住許可が取り消しになる5つのケース【まとめ】
まとめ
日本の永住権を取得するメリットや条件、申請時に入管へ提出する書類などをかなり横断的に解説しました。ただ、細かな内容を全て書くとこの記事が長くなりすぎるので、各項目の詳細については記事を分けてさらに詳しく解説しています。
2019年5月のガイドライン改定以降、日本の永住権は取得の難易度が高くなってきています。この記事内に貼ってある永住権についての解説記事を永住権取得にお役立ていただければ幸いです。